恋愛小説ワールド

□一つのリンゴ
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ある日…

 

 

 

 

 

両親が死んだ…

 

 

 

 

「まだ若いのに…」

「事故ですって?」

「二人とも、即死だったらしいわよ」

 

そんな会話が…

あたしの耳に、イヤでも入ってくる。

 

叔父が喪主を勤め、あたしの両親の葬式がしめやかに行なわれている。

あたしは、すみっこでただ立っているだけだ。

実感がない、とか…

そういうわけでもない。

ただ…

つまらなかった…

 

「エリカちゃん」

エリカってのはあたしの事だ…

あたしは村岡エリカ。

今は高三。

って言っても、まだなりたてだけどね。

 

「何だよ…?」

あたしは険悪な顔で、今話し掛けてきた男…

村岡裕也を睨んだ。

 

裕也は、あたしのお父さんの弟…

つまりは、今喪主をやっている、あたしの叔父さんの息子だ。

年は…

確か21くらいだ。

 

「そんなに睨むなよ。
これからどうするの?」

葬式の最中とは思えないくらい、軽いノリで裕也は聞いてくる。

「知るかよ。
キャバ嬢にでもなって、何とか生活するよ」

あたしは突き放した様に言い、そっぽを向く。

「おいおい…
そんな事言うなよ。
何なら、家に来ない?」

裕也は、あたしの肩に手を置いて言う。

「叔父さんは、俺の親父の兄貴なんだし。
部屋も空いてるし。
何とかなるさ」

そんな裕也の手を、あたしは振り払う。

「考えとくわ」

あたしはそう言い放ち、その場を離れた…
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